横浜市で活動する地域訓練会にスポットをあて、発達に心配のある子ども達が参加し、親子が共に育ち合う場の様子を紹介してきました。最終回となる今回は、地域訓練会「港北ひまわり会」で活動する中学生の保護者3名のみなさんに、これまでの様々なエピソードを振り返りながら、親子の成長や地域に広がるつながりの輪についてお話を伺いました。
つながりに支えられて――欲しかった「わかる」の一言
― 最初に港北ひまわり会に入会してよかったことや、ご自身の変化を聞かせてください。
Bさん:私は現在シングルファザーですが、妻が元気だった頃は、子育てにあまり関わってきませんでした。入会後に妻が亡くなり突然子育てに関わることになったとき、会の親御さんたちの助けによって、少しずつ自分のやるべきことが見えたので心強かったです。
また港北ひまわり会には平日以外の活動もあるので、休日に父娘ふたりで行ける場所があることは幸せだと思っています。
Cさん:我が家は息子と娘の二人で入会しているのですが、私は同じ年頃の子を持つ親御さんだけでなく、年上のお子さんを持つ先輩方とのつながりに感謝しています。進学について悩んだときには先輩方の話を聞いて「こんな道があるんだ」と先の見通しを持つことができ、ほっとしました。実際に経験をした先輩方のお話をもとに、子どもにとって最適な道を考えることができたのでよかったです。
Dさん:幼稚園でも親同士のつながりはありますが、そこで悩みを話しても「みんな悩みはあるものだよ」で終わることが多くて。答えが欲しいわけではないけれど、発達に課題がある子どもを持つ親なりの悩みに「そうだよね」と共感してくれる友達は見つかりませんでした。
救われたと感じたのは、会の親御さんたちに話して「わかる、わかる」と言ってもらえたときです。私はこの「わかる」が欲しかったんだと気づき、それまでは自分の子育てにダメ出しばかりしていましたが、肯定してもらえたことで気持ちに余裕が生まれました。
港北ひまわり会で見つけた成長、見守られる安心の中で育つ子ども達
― 入会後、お子さんにはどのような成長がありましたか?
Bさん:思い出深いのは保育部の頃のパパ参観ですね。急にビシッとして、今までできなかったことをやっていたと、あとから先生(ボランティアさん)に聞きました。その日は普段と全然違ったと言われ、場面に応じた振舞いをしよう、いいところを見せたいから頑張ろうと、本人なりに考えられるようになったと思うと成長を感じました。
Cさん:娘は幼稚園の頃から地域の水泳教室に通っていました。最初は順調だったのですがクロールのような複雑な動きになると、まわりのお子さん達と同じペースで習得するのは難しい様子でした。そんな中、会の水泳教室では娘の障害をわかってくださる先生方が少人数制で教えてくださり、そのおかげで、小学2年生でついに25mをクロールで泳げるようになりました。その経験が娘の自信になっているので本当にありがたかったです。
Dさん:息子は入会前、幼稚園のプールの時間にまったく水に入れず、水着にも着替えられませんでした。水に慣れてほしくて、プールを習うことのできる場所を探して入会しましたが、会の水泳教室でも着替えができるまでに1か月程かかりました。プールサイドに行くにも、帽子をかぶるにも数か月……。その間、先生方は根気よく見守り、そのステップ一つ一つができるようになる度に褒めてくれました。そうした積み重ねの結果、今では25mを泳げるほどに成長しました。
会に入る前から息子はコツコツと着実に成長していたはずなのに、私一人ではそこに気づけませんでした。先生方のおかげで、息子の成長に気づける自分になれて良かったと思います。
必要な情報やかけがえのない時間を運ぶ、つながりは財産
― 会をきっかけに、どのような「つながり」が生まれましたか?
Dさん:会員同士のつながりで印象的なのは、息子に同じ趣味の友達ができたことです。
息子はエレベーターや電車のドアが大好きなのですが、ほかの親御さんにその話をしたところ、同じ趣味のお子さんが何人かいることが分かりました。そこで、エレベーターだけを巡るツアーを計画。子ども達は思う存分楽しんでいました。また同行した私達は交流の時間ができ、親同士のつながりも深まりました。
エレベーター好きというのはレアなので、会に参加していなければ出会えなかったご縁かもしれません。そんなレアな趣味でつながったからこそ、結びつきの強い友達ができたと思います。
Bさん:私は娘が中学校に進学する際、年上のお子さんを持つ先輩方に進学先の相談にのってもらいました。すでにこの会を卒会した方にも中学校の情報を色々教えてもらえたので、会にいたからこそ得られたアドバイスや気配りに感謝しています。
Cさん:地域とのつながりをお話すると、港北区には障害のある子ども達が活動する様々な団体があり、毎月「ななつから…」※1という会議をしています。この活動に参加したことで、ほかの地域訓練会の親御さんや支援する地域の方々とつながりを持てました。
また港北ひまわり会が加盟している「横浜障害児を守る連絡協議会」※2に行くと、区内に限らず、横浜市内で広くつながりを持つこともできます。会を通してほかの団体と関わることで、様々な情報をいち早く入手でき、つながりの幅も広がったと思います。
※1 ななつから…:港北区で活動する4つの地域訓練会と3つのサークルで発足。グループ同士のつながりや関係団体との交流を行いながら、情報交換や発信をしている。
※2 横浜障害児を守る連絡協議会:障害の種類も年齢も様々な、主に知的障害のある子どもを持つ親の会の連絡会。障害のある子どもの権利を守り、 誰もが当たり前に地域で暮らせることを願い活動している。
保護者の想いから考える、誰もが暮らしやすい地域へのヒント
―みなさんが考える、誰もが暮らしやすい地域とはどのようなものですか? またその実現に必要と思うことを聞かせてください。
Cさん:息子が小学生の頃、送迎を祖母に手伝ってもらっていました。通学路にはコンビニがあって、祖母は息子にお願いされていつもそこに立ち寄っていたんです。
ある日、私が息子とそのコンビニに行くと、店員さんが息子の名前を呼んでくれて、帰り際にハイタッチもしていました。私はとても驚き、こんなふうに地域の人とつながれて、息子のことを知ってくださる人と場所があると思ったら嬉しくなりました。
誰もが暮らしやすい地域のためには、顔を知っているとか、声をかけてもらえる機会が誰にとっても増えると良いと思います。たとえば、どんな人も気軽に立ち寄れて「なんとなくあの人知っている」という関係が築ける、コミュニティカフェのような場所が増えてほしいです。
Dさん:息子が成長して一人で外出できるようになると嬉しい反面、心配も増えました。そのため、近所に住む方や会の親御さんに「息子さんを見かけたよ」と声をかけてもらうと「息子は知っている人に見守られている」と感じ、この地域に住んでいて良かったと思います。
大切なのは人に関心を持つことではないでしょうか。知り合いが増えるし、困り事にも気づけるようになるので。困っていたら声をかけて助け合うことが、自然にできるようになると良いのではないかと思います。
Bさん:娘の小学校進学時、私はすでにシングルファザーだったのですが、子育てと仕事を両立できるよう、学校の先生、放課後等デイサービス※3、港北ひまわり会(活動ホームともだちの丘)、相談支援事業所が一堂に会して、進学前に相談にのってもらいました。
その結果、様々なサービスを計画的に利用することで、シングルファザーであっても仕事が続けられる環境を整えることができました。
サービスの利用には様々な申請手続きが必要ですが、何をしていいかわからず二の足を踏む人は多いはず。支援が必要なときに、知るべき情報へアクセスしやすくなり、申請の負担が軽くなると暮らしやすさにつながると思います。
※3 放課後等デイサービス:就学している障害のある児童や、発達に心配がある児童に療育を提供するサービス。学校終了後や休日に、生活能力の向上のために必要な支援や余暇などを提供している。
― 貴重なお話をありがとうございました。最後に港北ひまわり会の活動に参加する、お子さんの声を聞かせてください。
Bさん:娘は書道教室でみんなと習字の練習をするのが楽しく、会の仲間は一緒に楽しい時間を過ごせる友達という感覚のようです。あとはみんなでバスにのって出かけるバスハイクに、また行きたいと言っていました。
Cさん:娘は水泳教室が好きでクロール、平泳ぎ、背泳ぎもできるようになりました。できることが増えたという実感があるようで「もっとうまくなりたい」と前向きです。また娘にとって、会のお子さん達は一緒に頑張る仲間だそうです。
Dさん:会の書道教室は好きな字を自由に書いていいので、息子は書道が楽しいようです。会の仲間は一緒に遊ぶ「友達」と言っていて、息子のなかに友達という概念ができあがったことに驚き、また一つ成長を発見しました。
港北ひまわり会は子ども達の成長をあたたかく見守り、親も子も安心できる居場所です。その活動を通して、会の中でも地域の中でも、つながりの輪は広がっていきます。
「わかる」の一言に込められた共感、地域で名前を呼んでもらえる喜び、見守られている安心感——。みなさんのお話からは、人に関心を持ち、助け合うことの大切さが伝わってきます。その積み重ねが、誰もが安心して暮らせる地域への第一歩ではないでしょうか。
【紹 介】
地域訓練会 港北ひまわり会
<主な活動拠点>
港北区障害者地域活動ホーム ともだちの丘
横浜ラポールなど
<活動日>
保育:火曜
教室活動:主に土・日曜
<年齢層>
未就学児~高校生
