前回に引き続き、発達に心配のある子ども達が参加し、親子が共に育ち合う地域訓練会を紹介します。
第2回は地域訓練会「ほっぺ学校部」をクローズアップ。ほっぺには保育部、就学部、学校部、成人部、親の会があり、学校部は小学生から高校生の子ども達の活動です。今回は活動の1つである体操教室「アタック」を見学しながら、高校生のお子さん4名とその保護者のみなさんにお話を伺いました。
ほっぺが生んだ優しさのネットワーク
まずは保護者のみなさん――Bさん、Cさん、Dさん、Eさんに伺ったお話をご紹介します。
― 最初にほっぺ学校部について教えてください。
Bさん:ほっぺ学校部の活動は「発達に遅れのある子どもと親の親睦をはかり、福祉の向上と障がい児者に対する地域の理解を広げることに貢献し、就学後の余暇を支援し自立に向けての訓練を行うこと」を目的としています。
学校部には「ムーブメント」「アタック」「いろ☆いろ」の3つの活動があり、「ムーブメント」と「アタック」はボランティアとして協力してくださる専任講師が担当します。2024年度からは年少から年長までの未就学児が所属する「就学部」と一緒に活動しており、今年度は就学部6名、小学生3名、中学生3名、高校生7名の計19名が所属しています。幅広い年代の子ども達が一緒に活動するなかで、上の学年の子が下の学年の子を可愛がり、いい関係ができあがっています。
「ムーブメント」はムーブメント用具(カラーロープ、スカーフなど)を使用し、ピアノとコラボレーションしながら「あたま・からだ・こころ」を育てることを目的に、専任講師がムーブメント教育理論に基づいて指導しています。
「いろ☆いろ」は、保護者が計画する活動(買い物学習や工作、生け花、焼き芋など)を通してルールを学び、卒業後の社会参加に向けて、仲間と様々な体験をすることを目的に活動しています。
― 見学させていただいた体操教室「アタック」は、どんなことをする活動グループですか?
Bさん:専任講師の指導のもとストレッチ、ラン、ジャンプ、バドミントン、ボッチャなどを通して楽しみながら体を動かします。早く走るための腕の振り方、ジャンプのやり方など専任講師ならではの指導内容もあり、身体をうまく動かす方法を身につけることにつながっています。
― ほっぺに入会したきっかけと、入会してよかったと感じたことを教えてください。
Bさん:1歳半健診で発達の遅れに気づき、2歳を過ぎても発語がなく、保健師さんに相談したことをきっかけに勧められたのがほっぺ保育部でした。
入会当初は子どもに障害があるとは思っていませんでしたが、ほっぺに入ったことで徐々に、子どもに障害があることを受け入れられるようになりました。また保育部は親子分離なので初めて親子が離れて過ごし、私はすごくリフレッシュできました。子どもは慣れるまで時間がかかったけれど、親と離れて過ごす経験が成長につながったと思います。
Cさん:うちの子は放課後等デイサービス※1に通っていますが、そこでは聞けない情報がほっぺから入ってくるので助かっています。たとえば利用できる支援やサービス、進学先のこと、将来に向けた就労や年金の情報などを先輩お母さんが教えてくれたり、詳しい人を紹介してくれたりするネットワークに助けられています。これは保育部から成人部にわたる親同士のつながりのおかげですね。
― ほっぺは親子にとってどんな場所ですか? またお子さんの変化をどのように感じていますか?
Bさん:子どもの居場所であると同時に、親の居場所でもあります。また学校部は親子で参加するため、運動や工作などの活動を通してできなかったことができるようになるのを間近で見られて、成長を実感できる場でもあります。長年の活動の積み重ねで、最初はまったく伝わらなかった口頭での指示が少しずつ理解できるようになったり、先生の真似をして動けるようになったのは大きな変化だと思います。
Eさん:ほっぺは家族や親戚とはまた違う、子どもを見守ってくれる場所です。2歳から入会しているので、先輩お母さんや協力者さん、ほっぺの活動を支えてくれている「せや福祉ホーム」さんは、今までの成長をずっと見守ってくれています。そうした方々の存在がとてもありがたいです。
Dさん:小さい頃は集団活動がとにかく苦手で、人が集まる場では周りを睨みつけて立ち尽くしていました。今では活動する仲間と楽しく過ごしていて、私も成長を感じています。体を動かすのが好きで運動神経がいいと気づいたのは、ほっぺに入会してからなんですよ。
― ほっぺに入会することで、どのような「つながり」が生まれたかを教えてください。
Bさん:学校も学年も違い、障害特性も異なる子ども達ですが、小さい頃から一緒に活動することで「仲間」という絆が生まれていると思います。
Cさん:ほっぺの中で地域に関する情報として、地域ケアプラザの余暇活動を紹介してもらい参加しています。子どもは高校3年生なのでほっぺ学校部での活動は終わりますが、そちらの余暇活動は今後も参加できるので続けていきたいと思います。
Eさん:私はほっぺのつながりを通して「瀬谷区発達障害理解啓発グループant mama(アントママ)※2」の活動にも参加しています。
― ほっぺの活動で大切にしていることは何ですか?
Bさん:地域訓練会は自分たちで運営をするので、やってみたいことを取り入れるようにしています。
たとえば、ここ数年は特例子会社※3の見学に行っています。これは個人では実現が難しいことなので、ほっぺという「団体」だからできることだと思います。
また自分たちが知り得た情報と経験を次の代の人たちに伝えていけるのは、保育部から成人部までのつながりがあるからこそ。このつながりを大事にしていきたいです。
― 最後に子育てをするなかで、地域の方にどんなことを伝えたいですか?
Bさん:発達障害という言葉は広く知られるようになりましたが、まだまだ周知が足りないと感じています。障害があると急に大きな声を出したり、走り出したりするなどのイメージを持たれるかもしれませんが、一見すると障害があるとはわからず、目立たず普通に地域で暮らしている方もいます。だから障害があるからといって怖がらずに見守っていただきたいです。
Dさん:うちの子は高校生からヘルプマーク※4をつけて、一人で通学しています。普段は、直接何かをしてもらいたいわけではないのですが、意外と身の回りには、目に見えない障害がある人が普通に暮らしているということを知ってもらえるとありがたいです。
Eさん:普段の生活で地域の人の手を借りる場面は少ないですが、災害などで障害のある人が避難所で生活する場合、慣れていないと受け入れる側も大変です。自治会で行う避難訓練に障害のある人が自主的に参加するのは難しいので、いざというときに互いが困らないように訓練に参加しやすい仕組みがあると良いと思います。
Cさん:子どもには近所の方に会ったら挨拶するように伝えているので、挨拶したら返してもらえるといいなと思います。また周囲の人に「大変ね」と声を掛けられることがたまにありますが、そんなに大変なことばかりではなく、普通に幸せに暮らしていることを知ってもらいたいです。
※1放課後等デイサービス:就学している障害のある児童や、発達に心配がある児童に療育を提供するサービス。学校終了後や休日に、生活能力の向上のために必要な支援や余暇などを提供している。
※2 ant mama:知的・発達障害、自閉症などの障害のある子を持つ保護者で2011年に結成され、わが子の「ありのまま」を知ってほしいとの思いから、地域で様々な啓発活動を行っている。
※3特例子会社:障害のある方の雇用促進や安定を目的に、特別な配慮のもと設立された子会社。
※4 ヘルプマーク:外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマーク。
共に笑い、成長してきた「一緒にいると楽しい仲間」
取材に訪れた日は体操教室「アタック」が行われ、専任講師の指導のもとでお子さん達がはつらつと体を動かす姿が印象的でした。今回は、参加していた高校生のお子さん4名にもお話を伺いました。
― ほっぺの活動で楽しいと思うのはどんなときですか?
「『アタック』の活動で、走ることとバドミントンが楽しいです。」
「体操、生け花、焼き芋など自分一人ではできないことをしているときが楽しいです。みかん狩りやクリスマス会なども毎年楽しみにしています。」
「大好きなボランティアさんがいて、その方と一緒に『アタック』で体を動かすのが楽しいです。あとはおでかけも好きです。」
「運動やトレーニング、ウォーキングなど体を動かすことが好きです。」
― ほっぺで一緒に活動する仲間はどんな存在ですか?
「いつも楽しく過ごせる仲間。一緒に活動するのが楽しいです。」
「学校も学年も違うけれど、小さい頃から知っていて会うと安心します。」
「会うのがいつも楽しみで、一緒にいると楽しいです。」
「一緒に活動するのが楽しい仲間です。」
― これからやってみたいことはありますか?
「ティーボール※5をたくさんやりたいです。」
「高校卒業後は一生懸命働いて、鉄道でいろいろなところに行ってみたいです。」
「みんなでおでかけするのが好きなので、これからも続けたいです。」
「これからも『アタック』の活動で走ったり、バドミントンもやりたいです。」
※5ティーボール:ピッチャーのいない野球(ソフトボール)。打者は止まっているボールを打ち、一塁に走る。ボールとバットが柔らかいので、子どもや障害のある方にも適したスポーツ。
小さな頃から一緒に活動してきたお子さん達と、その保護者のみなさんは10年以上を共にする仲間です。
お子さん達にとって、ほっぺで出会った仲間や培った経験は大人になっても忘れない、かけがえのないものとなります。そして保護者のみなさんにとっても、たくさんのつながりを紡いできたほっぺは、なくてはならない大切な居場所となっているのです。
【紹介】地域訓練会「ほっぺ」のご案内(せや福祉ホーム ホームページ内)
https://seyafukushihome.org/hoppe.html
